最愛宣言~クールな社長はウブな秘書を愛しすぎている~

「かなり真剣みたいね。馬鹿みたいに自信満々だし」
「そりゃあ大銀行の頭取がバックについてるからなあ。家柄は申し分ない」
「……」
「頭いいしな。社交界慣れしてるし。経営にも明るいし」
「……」
「美人だし」
「……」
「文句のつけようがねえよなあ」

 さきイカを摘まむ横顔を睨みつけると、それを見て真木は小さく肩をすくめた。

「だって仕方ねえじゃん。全部本当のことだし」

 そうだとしても今ここで列挙しなくてもいいんじゃないだろうか。お前は一体誰の味方だ。
 
 不貞腐れた私を見ながら、でも、と真木は言葉を続けた。

「受けて立つんだろ?」

 にいっと口角を上げて、それ以外の選択肢なんてありえないだろとでも言いたげに。

 その笑顔に、心の中でつかえていた何かが、ぽろりと転げ落ちたような気がした。

「当たり前でしょ」

 考える間もなく口から滑り出た言葉に、背中を押される。

「ここで引いたら女がすたる。売られたケンカはきっちり買うわ」
「おー怖えー」

 そう呟く真木の表情は、茶化しながらも、強気の私の発言に安心しているようにも見えた。

 今、ようやく目が覚めた。私は一体何を弱気になっていたんだろう。
 東吾はきちんと覚悟を決めて伝えてくれた。なのに私はそれに向き合わずに、雅さんの存在に怯えて、今の幸せを失ってしまうことばかりに目がいって。ぐちぐちと勝手に落ち込んでるだけで、考えるべきことを後回しにしてる。

 きちんと自分の気持ちと向き合わなきゃ。それが今、私がやるべきこと。
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