最愛宣言~クールな社長はウブな秘書を愛しすぎている~

「俺は佐倉里香も捨てたもんじゃないと思ってるよ。屍は拾ってやるから、安心して挑んで来い」
「当たって砕ける気はないわよ」
「相手は手強いぞー」

 笑いながら手に持った缶ビールを差し出してくる。

「まあ、お前らしくいけよ」
「うん。……ありがと、真木」

 私も自分の缶ビールを勢いよくぶつけた。
 カンっといい音を立てて、缶についた雫が飛び散った。


 それから私たちは、人気がすっかり消えた公園で子供みたいに遊んだ。ブランコをどちらが高く漕げるか競争し、ジャングルジムによじ登っててっぺんでビールを飲む。ヒールを脱ぎ捨てたストッキングだけの足に、冷えた鉄の感触が気持ちよかった。

 すべての缶を開けたあと、お互いに帰路につく。ここから家まで歩いて五分の私は、また地下鉄に乗って帰る真木に、今更ながら申し訳なくなった。

 公園の入り口で駅に向かう後ろ姿を見送っていると、真木が突然振り返る。

「佐倉。無理すんなよ」

 暗がりで、外灯に照らされた表情はやけに真面目だった。

「うん?」
「男は社長だけじゃないからな。時には諦めも肝心」
「ばーか。誰が諦めるか」
「まあ、頑張りすぎんなってこと」

 じゃな、とまた後ろを向いて手を振る、その姿が見えなくなるまで、私はじっと見守り続けた。

 コンビニで、今隣にいて欲しいのは真木だ、と直感したのは、間違いじゃなかったな、と思った。
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