"あやまち"からはじめませんか?
「吉永結衣をよろしくお願いします」
6月上旬。
生徒会選挙が1週間後にせまり、みんなそれぞれアピール活動を始めていた。
私も朝にみんなが登校している時間に呼びかけをしている。
けれど、
集まってくるのは隣にいる彼を応援している人ばかりだ。
「宇佐美くん、応援してるね」
「ありがとうございます」
「絶対に宇佐美くんに票入れるから、校則もっとゆるくして~」
「え~どうしよっかな」
彼は相手によって自分を使い分けて対応をする。
それが多くの人を呼んでいることは分かっていた。
先輩や後輩、男女関係なく周りに集まるのは
人当たりがいいからだ。
でもそんな計算高さが、苦手だ。
現に今も自分への投票の呼びかけをすればいいのに
わざわざ私の後ろについて補佐を行っている。
宇佐美くんは今は大人しくしてるけど
きっと、自分が天下を取ったら好き勝手するつもりだろう。
そんなことさせない。
どうにかして、立場を守らないと……。
「はぁ……」
深いため息をつく。
ダメだ、今すごくあせってる。
どっしり構えていなくちゃいけないのに
もし生徒会長になれなかったらってことばかり考えてしまう。
私が考えるべきことはもっとたくさんあるのに……。
「会長、今年も会長に票入れますから」
「ありがとう」
笑顔を作る。
大丈夫。
私なら絶対に大丈夫だ。