"あやまち"からはじめませんか?



『吉永結衣?誰だっけ?』

『ちょっと同じクラスじゃん』


『結衣、疲れてるんだ。後にしてくれないか』

『結衣、ママ。仕事行ってくるからひとりで晩御飯食べてね』


周りは誰も私を必要としてくれない。

私はぎゅっと唇をかみしめると彼に言った。


「私の仕事なんだから別にいいでしょ!

宇佐美くんってさ……っ、ちょっとおせっかいだよ」


その瞬間、宇佐美くんの眉がピクっと動く。


悪い流れだ。


自分の一番悪いところが見える瞬間だと心では分かっていたのに止まらない。


「宇佐美くんはさ、分かんないでしょ?

がむしゃらにやらなきゃいけない人の気持ちなんて」


なんでも持っている彼。

仕事も出来るし、人への頼り方も上手いうえ、多くの人がついてくる。


私がなりたいと思っていた理想を全部宇佐美くんが奪い去っていく。







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