"あやまち"からはじめませんか?






「お疲れ様でした。時間になったので切りのいいところで上がって下さい」


激務の中、時間がくるのはあっという間だ。

まだ全然追いついていない。


今日も残らなくちゃ……。



「結衣さん、これ片付けておきましたので帰ります」

ありがとう、と伝える前に彼は背中を向けてしまった。


「あ……」


虚しく閉められた扉を見つめ、私は深いため息をついた。


最近、宇佐美くんはこんな態度ばっかりだ……。


しかし、宇佐美くんが手渡して来た書類は相変わらず完璧で中途半端なところがなかった。


「頑張ろう……」


ひとり残された教室でポツリとつぶやく。

誰もいないというのは案外寂しいものだった。



けっきょく今日の仕事が終わったのは夜8時頃。


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