"あやまち"からはじめませんか?



「怖いの……誰にも必要とされなくなったら、

私がここにいる意味がなくなってしまうことが」



私は小さな頃から、孤独になることの恐怖が人一倍大きかった。


私の父と母はふたりそろって仕事人間で、いつも家を開ける。

学校から帰ればいつも、広い部屋にひとりぼっちで

家族そろって食事をしたことがほとんどなかった。


『今日はママの作ったハンバーグなんだ。楽しみ~』

『私も今日、餃子を一緒に作るんだよ』


周りの人の話を聞いてはうらやましくて、いつか私の家にも


そんな日が来たらいいな、なんて思っていた。


お母さんと一緒に作って、家族で食べられるご飯はどんなに楽しいだろう。


いつも作り置きの冷えたご飯が机にあって、それをひとりでさみしく食べる。


全然美味しくも、楽しくもなかった。



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