"あやまち"からはじめませんか?
「だってそうでしょ?結衣さんくらいかたいとみんな……」
「結衣さんって呼ばないで!!」
私は声を荒げて彼に感情をぶつけると、そのまま逃げるように生徒会室を出ていった。
「はぁ……はあっ」
完全にヤツ当たりだ。
彼が生徒会長の座をねらっていると分かってから、彼と一緒にいると余裕がなくなる。
『結衣さん』
この呼び方が私はずっと嫌だった。
彼が私を生徒会長と呼んだことは、一度も無い。
私を名前で呼ぶのは、彼が私を認めていないから。
「なにあせってんのよ、私……」
相手は後輩なのに。
廊下をとぼとぼと歩いていると、窓の外から声が聞こえてくる。
「ねぇ~今度の生徒会誰に入れる?」
「今の会長のままでもいいいかなって思ってるけど……宇佐美くんが立候補したら宇佐美くんでしょ!」
「やっぱり!?私もそうする~」
後輩なのに。
勝てる気がしない。
このままじゃ私はきっと彼に負けてしまう。