"あやまち"からはじめませんか?



ぐっと唇を噛みしめる。

私は宇佐美くんを突き飛ばすと、彼に言った。


「……もう、離して」

「結衣さ、」

「私にこんなことして楽しい?

似合ってないなら初めからそうやって言えばいいじゃない!」


感情を吐き出すように彼に伝えてしまう。

もう、こんなことするのはやめようって思っていたのに

私はいつも変われない。

すると宇佐美くんは静かな声で言う。



「似合ってないって、俺がいつ言ったんですか?」

「えっ」


「俺はそんなこと一度も言ってない」

「だってその格好でお店に出ちゃダメだって」


「ダメに決まってるでしょう?

こんなに可愛いあなたを他のヤツなんかに見せたくない」


真っ直ぐな瞳が突き刺さる。

なんで、そんなこと……言うの?

またそうやって私のこと、からかってるの?


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