"あやまち"からはじめませんか?



ーードキン、ドキン。

心臓の音が早くなる。


「結衣さん、そろそろ気づいて下さい

俺はずっと結衣さんのこと……」


彼がそう言いかけた時。


ーーコンコン。


ノックの音が響いた。


「会長、人手が足りてなくて……もう出られますか」


っは、と我に返る。

そうだ行かなくちゃ。


「うん。今行くから……」


そう言って宇佐美くんの横を通り過ぎようとした時、彼が私の肩になにかをかける。


「えっ?」

「これで妥協しますから、着ていて下さい」

「わ、分かった」


それは宇佐美くんの着ていた上着だった。

私には大きくて、スカートから見える足までおおうほどの上着だ。


「じゃあ先行くね」


私は宇佐美くんにそう伝えると、生徒会室出た。


『俺はずっと結衣さんのこと……』


あの時、宇佐美くんは何て言おうとしたんだろう。


< 150 / 276 >

この作品をシェア

pagetop