"あやまち"からはじめませんか?




なんだ……。

彼が戻ってきたのかと思ってしまった。


「じゃあ一緒に帰らね?俺も自分のファイル取りに来ただけなんだ」

「うん」



帰る準備をしながら、岩田くんと生徒会室を出ると彼は言う。



「ドア開けた瞬間、ぼーとしてたように見えたけどなにか考えごと?」

「えっ、あ……考え事というか」


私は遠くを見つめながら思いきって言う。


「岩田くんって恋とかしたことある?」


「なんだよその質問」


彼は笑いながら靴に履き替えると、私の方を見る。


「吉永、恋してんの?」


「そ、そうじゃなくて……!次に生徒会便りに恋について書くことになって」



ウソをついてしまった……。


「定義とか難しいなって」

「へぇ、恋か……よく分からないけど、定義なんかないんじゃねぇの?」




< 204 / 276 >

この作品をシェア

pagetop