"あやまち"からはじめませんか?
なんだ……。
彼が戻ってきたのかと思ってしまった。
「じゃあ一緒に帰らね?俺も自分のファイル取りに来ただけなんだ」
「うん」
帰る準備をしながら、岩田くんと生徒会室を出ると彼は言う。
「ドア開けた瞬間、ぼーとしてたように見えたけどなにか考えごと?」
「えっ、あ……考え事というか」
私は遠くを見つめながら思いきって言う。
「岩田くんって恋とかしたことある?」
「なんだよその質問」
彼は笑いながら靴に履き替えると、私の方を見る。
「吉永、恋してんの?」
「そ、そうじゃなくて……!次に生徒会便りに恋について書くことになって」
ウソをついてしまった……。
「定義とか難しいなって」
「へぇ、恋か……よく分からないけど、定義なんかないんじゃねぇの?」