"あやまち"からはじめませんか?



「私……っ、何してるんだろう」



翌日の朝。

私は赤沢くんに宇佐美くんを非常階段に呼び出せと命令された。


「いいか、確実にやれよ。見てるからな」



そして、非常階段の一番上に宇佐美くんはやってきた。


「話ってなんですか?」


宇佐美くんをここから突き落とせば、生徒会の評価も下がらずに、私も副会長として生徒会メンバーにいられる。


前の私だったら、やっていたんだろうか?

目の前が真っ暗になった時も助けてくれた、側にいてくれた人。


「ごめんね、宇佐美くん……」


そう言って私は彼に手を伸ばした。

伸ばした手で彼を掴み、前に引き寄せる。


「そっち、危ないから」


宇佐美くんは後ろを振り返ってああ、とつぶやいた。 


出来るわけないじゃない。


どんなことが起きようが彼を突き飛ばすなんてできっこない。


「何かあったんですか?」

「ううん、別になにもないわ。私が不甲斐なかっただけ」


すると宇佐美くんは深くため息をついた。


「あなたはいつもそればっかりですね……

そんなに俺は頼りないですか?」


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