"あやまち"からはじめませんか?



いやだよ。


「……けて、」

「こっち向けよ」
「助けて宇佐美くん……」


私が小さくそうつぶやいた瞬間。


――ガチャ。


「結衣さん!」


勢いよくドアが開いた。


「宇佐美く……」

「やっと頼ってくれましたね」


ドアの向こう側にいたのは、彼だった。


「どうして……」

「あなたが助けてと言ってるのに、駆けつけないわけがないでしょ?」


宇佐美くんは優しい顔を見せた後、赤沢くんを睨みつける。


「その汚い手、離してくれませんか?」


じりじりと宇佐美くんが赤沢くんに近づく。


「宇佐美がなんで……」

「バレバレなんだよ。結衣さんがミスし出したと思ったら

あなたがしゃしゃり出でくる。何を考えているかなんてすぐに分かりましたよ」


宇佐美くんは知っていた?


「コイツはお前を血に堕とそうとしたやつだぞ、庇う必要なんか」

「それがどうかしましたか?」





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