"あやまち"からはじめませんか?


「そんなのひとつしかないでしょ?」


顔を上げた彼とパチリと目が合う。


「俺があなたのことを好きだからです」


まっすぐに、それからハッキリと伝えられた。


「俺は最初から復讐なんて興味はない。

興味があるのはあなたのことだけです」


ドキン、ドキンと速く鳴る心臓。

彼が目の前にいることでほっとしている自分がいる。

すると宇佐美くんは私の手を優しく握った。


「……いい加減俺の伝えた言葉に向き合ってくれませんか?」


「そ、それは……」


ずいっと宇佐美くんが私に詰め寄る。


「分からない」


不安でいっぱいでどうしていいか分からなかった時、宇佐美くんの顔が思いつく。

生徒会、一人で寂しい時、彼は来ないかなってドアを見つめてしまう。


思いつくのは彼の顔ばかり。

それなのに……。


「分からない、恋なんてしたことない、から」


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