"あやまち"からはじめませんか?


温かい手でぎゅっと握られる。

「だ、誰かに見られたら……」

「この辺り、あんまり人通りないから大丈夫ですよ

まぁ……俺はバレてもいいんですけどね」


「だ、ダメよ。まだお試しなわけであって好きって意味じゃ……」

「分かってますよ。でも今は俺の結衣さん」


そう言って宇佐美くんは私と繋いでいる手にちゅっと口づけた。


「な……っ」

かあっと顔が熱くなる。


「ふふっ、真っ赤。可愛いですね」


心臓のドキドキがうるさくて、顔が熱くて、恥ずかしい。

だってこんなこと言われたことないから。


「ち、違う……急に変なこと言うから」

私はふいっと顔をそむけた。

宇佐美くんの顔を見ていられない。


「今はいいですよ、でもそのうち結衣さんの方から好きって言ってくれるの待ってます」

「そんなこと言うわけないじゃない」



可愛くない言葉を言うことでしか自分を保っていられない。


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