"あやまち"からはじめませんか?


結局、宇佐美くんは私の家の前まで送ってくれた。


「ありがとう、宇佐美くんの家逆方向なのに」

「いえ、俺が一緒に居たかったから」


私の家に視線を向けると、宇佐美くんは言う。


「親御さんはまだいないんですか?」


部屋が真っ暗だったからだろう。


「あ、そうなの……うちの家帰って来ないことが多くて」

「夜も?」

「……そうね、夜も一人で寝ることが多いわ」

「一人……大丈夫ですか?」

「ええ、全然大丈夫よ。昔からだからもう慣れちゃった」

「そうですか」


親がこうやって帰って来ない環境って、きっと普通じゃないんだろうな。


不安そうに私を見る宇佐美くんに、私は元気に伝えた。


「じゃあまた明日ね」

「あ、はい……また」


手を振り宇佐美くんが去っていくのを見送る。


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