"あやまち"からはじめませんか?


「今日はこれで我慢してあげます」


宇佐美くんは私から少し距離をとった。

あ、なんだ……されるのかと思った。

少し、されてもいいと思ってしまった。



ドキン、ドキン、ドキン。

心地よく心臓の音が鳴る。

されてもいいって思うなんて、私どこかおかしいのかな。

それとも宇佐美くんのことが……。


「なんですか?」


——ドキン。

ううん、そんなはずない。
この胸の高鳴りは初めて男の人を家に入れているからだ。

それから宇佐美くんは濡れた髪を乾かすと、帰る準備をして言った。


「じゃあまた……」

「あ、うん」


宇佐美くんが帰ったら、またこの部屋に一人。

今まで人がいたせいかいつもより寂しくなってしまった。


玄関で靴を履いた宇佐美くん。

すると彼は何か考えながら私に伝えた。


「あの、結衣さん」

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