"あやまち"からはじめませんか?


玄関のドアを開けて宇佐美くんを見送る。


「今日は本当にありがとう、すごく楽しかった」


こんな日がいつまでも続けばいいのにって思ってしまった。

でも、そういうわけにはいかない。

宇佐美くんの親御さんだってきっと心配すると思うから。


「こんな夜までごめんなさいね」

「いいえ、またいつでも呼んでください」


そして背中を向ける宇佐美くん。

寂しくて、心がじんとした。

ああ、嫌だな。

今日という日が終わってほしくなくて、ずっと宇佐美くんにいてほしい。

なんだか私おかしなことしてるって分かっているのに。


「宇佐美く……」


小さい声で彼のことを呼んでしまった。

なんだろう。
夜を一緒に過ごしていたから?

分からない。

でも小さな声だ。
聞こえるわけがない。

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