"あやまち"からはじめませんか?

「ええ、でもすぐに仕事に戻るから」

「そっか……」


またいなくなっちゃうんだ。

帰ってきたと期待したらお母さんはすぐに出ていってしまう。

一度でもいい、一緒に夕飯が食べれたらそれでいいのに。


「あ、あのねお母さん」


なんでだろう。
いつもなら言おうと思わなかったのに、側に宇佐美くんがいるからだろうか。


「一緒に夕飯だけでも食べない?」


今まで言えなかったことをお母さんに伝えた。

お願い……今日はなんか一人でいたくない。

するとお母さんは言った。


「何言ってるのよ、そんな時間あるわけないでしょ」


——ズキン。


「そう、だよね……」


鼻がツンとする。

分かっていたのに、今日はもしかしたら一緒に食べようって言ってくれるんじゃないかって思ってしまった。

< 271 / 276 >

この作品をシェア

pagetop