"あやまち"からはじめませんか?


「ずっと待たせてごめんなさい」


宇佐美くんの抱きしめる手が力強い。


「あなたが去っていく時、伝えなきゃって思ったの」

「うん」

「さっきの言葉が嬉しくて……っ、それで」

「気持ちがこぼれた?」


宇佐美くんの優しく問いかけてくるような言葉に、私はこくんとだけ頷く。


「……好きって、思っちゃった、の」


すると宇佐美くんは私の目から溢れる涙を拭う。


「こんなに泣いて、あなたって本当かわいい人ですね」

「……っ」

「いいんですか?俺、結衣さんのこと愛し出したら止められませんよ?」

「そ、それはちょっと……」

「もう遅いよ」

──グイッ。

「ん……」


宇佐美くんは、私を引き寄せるとそのまま唇を重ねた。


「宇佐美く……」

「ずっとしたかった。契約のキスでも、強引なキスでもなくて

あなたを愛おしいと伝えるキスを」


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