"あやまち"からはじめませんか？

「その書類貸して、今日中なんだよね？」


私が手を差し出すと、宇佐美くんはくすりと笑った。


「分かってるクセに」

「分かってるってなにが、」


「こんな時間ですよ？

今日中にやったって誰か見てくれるんです？」

「……っ」



残ったのは仕事があるからじゃない。


そう悟ると、身体に力が入る。



「結衣さん、こっち来てください」



でも逃げられない。

私は手を引かれるがまま、彼の元に行った。



「何をすればいいの？

は、早く終わらせて！今日はもう疲れてるの」


「早く終わらせるかどうかは結衣さん次第ですよ」



すると彼は楽しそうに笑って、すぐ近くにあるイスに座った。



「結衣さん」


そして、ポンと膝を叩く。


「俺の膝に座ってください」


「……なっ！何言ってるの！？

そんなところ座れるわけないでしょ？」


「へえ、忘れたんですか？

先輩は俺におどされてる立場なんですよ」


「……っ」