"あやまち"からはじめませんか?
とっさに顔をあげると、宇佐美くんは満足気な顔をしてこっちをみていた。
「やっと、顔あげてくれましたね」
もう限界だった。
私の思考も、心も、
全部くずくずに溶けてしまう。
勢いよく立ちあがった私は彼のことを突き飛ばした。
ーードン!
「痛てっ……」
彼だったら、いくらでもこうやって遊んでくれる女子がいるだろうに。
「最低……っ」
わざわざ私みたいな女子を選んでもて遊ぶ。
そういうところが本当に苦手なんだ。
イスから倒れ落ちた宇佐美くんは、
尻もちをついたまま、私をじっと見つめる。
「な、なによ……」
それは睨んでいるみたいにも見えた。
彼のその顔はいつも少し怖い。
すると宇佐美くんは、言った。
「どっちが?」
「っ、」
彼の言葉に声が出なくなる。
ほこりを払いながら立ちあがる宇佐美くんの元に笑顔はもうない。