"あやまち"からはじめませんか?



でも、見ていてくれる人がいる。

私は内心それが嬉しかったんだ。


でも私は彼を裏切った。


彼には許されないことをしたのに。

どうして変わらずそんなことをしてくれるんだろう。


「どうして……」


復讐だって言って欲しい。


彼をおとしめた私への仕返しだって言って欲しい。


それなら納得できるから。


「どうしてだと思います?」


彼は口角を上げながら艶やかに笑う。


「……っ」


私はすぐに目を逸らした。


「こっち見て、目逸らさないで考えて下さいよ」

「そ、そんなの分からない!」


復讐だって思いたいのに、彼の表情を見ると分からなくなる。


「結衣さん」


彼が私にゆっくりと近づいてくる。

雰囲気が変わった。


ふたりきりの時だけに見せる彼の顔。




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