"あやまち"からはじめませんか?



彼が消毒液のフタを開ける。

長くて骨ばっているけれど、ゴツゴツしていなくてキレイな手。

なんか、なんでも絵になるんだよなあ。


悔しい。

彼が私の手にガーゼを優しく押し付ける。


宇佐美くん
まつ毛、長いな。


ぼーっと見つめていると、彼は私の視線に気づいたようだった。


「見すぎ」

「あ、ごめん……つい」

「見惚れた?」


くすりと笑いながらこっちを見る宇佐美くん。


「そ、そんなんじゃないから!」


そうはいいつつも、その優しい顔にドキンと胸が音を立てた。


宇佐美くんもこんな顔もするんだ。


っていうか、なんか近い……。


今さら彼との距離が近いことを実感して恥ずかしくなる。


すぐ側にある宇佐美くんの胸板。

ガッチリしていて、男の人っていう感じだった。


やだな、私何考えてるんだろう……。


すると彼は私の腕に優しく触れながら言った。


「結衣さん、ここ切れてる」

「ウソ!?」


見てみると表の人差し指から少し血が出ていた。


「いつやったんだろう……」


どうしても書類を触ることが多いせいか、こういうすり傷はしょっちゅうあった。






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