世界で一番可哀想な男のお話
フィア
最後の、48人目の女性はフィアという名だった。
彼女は今までの女性の中で飛び抜けて美しかった。
その美しさと言えば、国中の全ての男共が彼女に一目惚れをするほどだ。
もちろん王もその内の一人である。
だが、王はそれよりも自分の子供の感情が完結する事の方が気になり、
彼女にうつつを抜かすことは無かった。

ニルは彼女をとても愛し、彼女も彼をとても愛した。
今までのようにキスをすれば良いものの
彼はなぜか急に拒みはじめた。
愛する人にキスを拒まれ彼女もいい気はしなかっただろう。
拒む度に彼はこう言った、
「僕にも、僕にも分からないんだ。
 僕は君を愛し、君も僕を愛している。
 だからキスをするのは当たり前のように思える。
 今までもそうしてきた。
 だが、なぜだろう、
 なぜか君とはキスをしたくないんだ。
 分かってくれ…。」
彼女は彼の言った『今までもそうしてきた。』
というのも含め全てが理解出来なかった。

そしてついに、しびれを切らした彼女は
無理やり彼にキスをした。
それと同時に彼女のかげはうすくなりはじめた。

「だめだ!いかないでくれ!
 フィア!
 僕は君がいないとだめな気がするんだ!
 君がいないとどうやって生きていけばいいというんだ!
 フィア!」

彼の思いは届かず、彼女は民の記憶からも姿も完全に消えてしまった。

彼は自身の身体を抱きうわんうわんと泣きながら

「怖いんだ……。」

と一言だけ呟いた。

彼女から恐怖をもらった後だった。
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