死席簿〜返事をしなければ即、死亡
「生贄になったやつはどうなる?」
詰問口調で問いかけるのは、楠木雷人だ。
分かりきったことを尋ねてくる、頭の悪さ。そんなこと訊かなくても__。
そうか、わざとか。
楠木の鋭い眼差しが、それを物語っていた。
だからあえて答えてやろう。
「生贄は死ぬ」
すると、全員の顔が強張った。
感づいてはいるが、僕の口から言わせることで、事の重大さを全員に痛感させたわけだ。人の命がかかっているんだと。だから生贄なんて馬鹿なことはやめよう。
楠木の狙いはそこにある。
こいつは__生贄なんて出したくない。生徒たちのリーダーは、生贄を出すつもりはない。
僕の読み通り。
でも、それだと物事は解決しないんだよ。
「もし選ばないなら、ここで全員に死んでもらう。1人を犠牲に助かるか、全員が死ぬかだ」
その言葉に、楠木の顔が歪む。
誰かを差し出せば、残りのものは助かる。それとも、下手な正義感をかざして仲良く死ぬか?
この人数で襲いかかってくることもない。
今も放送室から流れてくる、生徒たちの名前。
それを流しているのは誰か?仲間が?
そんな思いが、生徒たちの反抗心を惑わせているんだ。
選択するしかない。
ただ、楠木雷人は生贄を選ばない。
楠木だけは、な。
「俺は、選ぶしかないと思う」
そう言って立ち上がったのは、小金沢篤だった。