死席簿〜返事をしなければ即、死亡


「生贄になったやつはどうなる?」


詰問口調で問いかけるのは、楠木雷人だ。


分かりきったことを尋ねてくる、頭の悪さ。そんなこと訊かなくても__。


そうか、わざとか。


楠木の鋭い眼差しが、それを物語っていた。


だからあえて答えてやろう。


「生贄は死ぬ」


すると、全員の顔が強張った。


感づいてはいるが、僕の口から言わせることで、事の重大さを全員に痛感させたわけだ。人の命がかかっているんだと。だから生贄なんて馬鹿なことはやめよう。


楠木の狙いはそこにある。


こいつは__生贄なんて出したくない。生徒たちのリーダーは、生贄を出すつもりはない。


僕の読み通り。


でも、それだと物事は解決しないんだよ。


「もし選ばないなら、ここで全員に死んでもらう。1人を犠牲に助かるか、全員が死ぬかだ」


その言葉に、楠木の顔が歪む。


誰かを差し出せば、残りのものは助かる。それとも、下手な正義感をかざして仲良く死ぬか?


この人数で襲いかかってくることもない。


今も放送室から流れてくる、生徒たちの名前。


それを流しているのは誰か?仲間が?


そんな思いが、生徒たちの反抗心を惑わせているんだ。


選択するしかない。


ただ、楠木雷人は生贄を選ばない。


楠木だけは、な。


「俺は、選ぶしかないと思う」


そう言って立ち上がったのは、小金沢篤だった。


< 115 / 221 >

この作品をシェア

pagetop