死席簿〜返事をしなければ即、死亡


2人が至近距離で睨み合う。


今にも殴りかからんばかりの、張り詰めた空気。


そこで僕は畳み掛けることにした。


「生贄を選ぶ方法は【投票】だ。くじ引きやジャンケンじゃない。運で済ませるな。お前たちが1人1人、ちゃんと誰を落とすのか考えて決めるんだ」


そう説明すると、全員の顔が曇った。


これで完全に逃げ道を塞いだ。


もしジャンケンなら、それは運だから仕方がないということになる。


ただ運が悪かっただけだ、と。


でもそんな生温いことはさせない。


こいつらの精神をへし折るために、こいつらの手で生贄の首を絞め殺すんだ。


自分の1票が、クラスメイトを死に追いやる。


「やっぱりそんなことは許さない」


楠木が、教壇にいる僕に向かって首を振る。


「でもやるしかない」


すぐに小金沢が言葉を差し込む。


「俺には選べない」


「お前が選べなくても、俺は選ぶよ」


「小金沢、お前は自分さえ助かったらそれでいいのか⁉︎」


「ああ、それの何が悪い?」


「お前っ‼︎」


楠木が殴りかかった。


その手を小金沢が振り払う。


「お前こそ、いいカッコするのはやめろよ」


「なんだと⁉︎」


「しょせん、お前の言うことは綺麗事じゃないか?誰も助けられやしないのに、リーダーぶるのはや__」


最後まで言い切ることができなかったのは、楠木が小金沢を殴りつけたからだ。




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