死席簿〜返事をしなければ即、死亡
20分後__。
私は、人気のない廊下を早足で進む。
教室での騒ぎが背中を追いかけてくるが、振り返ることなく進んだ。楠木くんと小金沢くんが喧嘩をして、先生の注意を引きつけてくれている。
とはいえ、いつバレるかわからないから急がないといけない。
私が【私】でないことに、先生が気づくだろう。
あんな奴、先生でもなんでもないけれど。
目指すは【放送室】だ。
今も聞こえてくる、名前を呼ぶ声。
それを流している【協力者】を突き止めるために。
でも__と思う。
このまま学校を出てしまいたい衝動にかられる。
そうすれば、私は助かるのだから__。
私だけは助かる。
先生に名前を呼ばれようが、放送室からのアナウンスで呼ばれようが、私は皆んなのように死ぬことはない。
一度、試しに限界まで返事をしなかった。
数秒が経過しても、なにも変わらない。苦しくないんだ。あまり平然としていると不審がられるので、苦しげに装って返事をしたけれど。
その時に、私は確信した。
名前を呼ばれて返事をしなければ、死ぬ。
けれど私は違う。
返事をしなくても、私は死なない。
だって私は【水口智花】じゃないから。