死席簿〜返事をしなければ即、死亡
転がるように職員室を飛び出すと、私は走った。
時間がない。
放送室に行って、今も流れている名前を呼ぶアナウンスを止めなければ!
もう目と鼻の先に見えてきた。
私は立ち止まり、呼吸を整える。そして制服のポケットから【はさみ】を取り出して強く握りしめた。
楠木くんから手渡された、はさみ。
楠木くん__やっぱり片平さんと付き合ってるのかな?さっきも抱き合ってたし。
こんな時だというのに、私は不謹慎にもそんなことを考えていた。
私が放送室に行くことを名乗り出た時、すごく心配してくれたんだ。
『水口、無理しなくてもいいんだぞ?』
『大丈夫。先生は私の新しい苗字を知らないし』
『何度もきくが、本当に誰も知らないんだな?』
『知ってる友達はみんな、もう居ないから』
『そうか。でも無理だと思ったらすぐ逃げろ』
『そんな、私だけ逃げるなんて__』
『あとは俺がなんとかするから』
楠木くんに『頼んだぞ』と言われて、肩を優しく叩かれた。
今もその温もりが残っている。
『あとは俺が』なんて言うけど、名前を呼ばれても大丈夫なのは私しかいない。ここは楠木のためにも頑張ろう!
よし‼︎と自分に気合を入れ、そーっと放送室の扉を押した。
誰かが居る⁉︎
えっ⁇
私は首を傾げた。