死席簿〜返事をしなければ即、死亡
お盆の上に置かれた、小さな丸いパンと水。
それを今井は、横並びに座っている3人の机に置いた。
「ふざけんなよ!なんであたしらが食べなきゃいけないんだよ!」
威勢のいい篠塚が、お盆をひっくり返す。
「篠塚有里華」
「__はい」
「篠塚有里華」
「はい」
「篠塚有里華」
「はい!」
「拾って席につけ」
静かに、だが揺るぎない声で今井が命令する。
完全にこれまでとは立場が違っていた。
なにかと担任を小馬鹿にからかっていたギャルにも、まったく怯むことがない。
それどころか、篠塚のほうが大きく舌打ちをして床に転がったパンとペットボトルを拾った。
「お前たちは散々、教師である僕を馬鹿にしてきた。先生、さっきも言ったよな?運は自らが引き寄せるって。ということはその反対に、頭の悪いやつは自分から運を手放す」
鼻先で笑いながら、講釈を垂れている。
運がどうとか言いながら、ただの仕返しじゃないのか?
「私は、私は先生のこと馬鹿にしたりしてない」
声を振り絞って訴えるのは、和田カレン。
確かに、篠塚たちギャルには属しておらず、攻撃的でもない一般的な生徒だが__?
「だから運だと言ったろう。名前を呼ばれた時点でお前は不運なんだ。でも3分の1になれば幸運じゃないか」
だから大したことはないんだと、今井は3人に食べることを強要した。