死席簿〜返事をしなければ即、死亡


3人は、誰もパンには手を伸ばさない。


もちろん水を飲むこともなく、じっと動かなかった。


そうだ、食べなければいい。


それで名前を呼ばれても、返事をすればいいだけで、食べなければいいんだ。


「そうか、誰も食べる気がないのか。頭も尻も軽いように見えて、少しは考える知恵があるらしいな」


今井が教壇から挑発するように3人に話し掛けるが、誰も相手していない。


言い返すこともなく、口を真一文字に結んでいる。


「それなら給食が終わらない。居残りしてでも食べてもらうか?でも今は逆に、それをすると問題になる時代だ。なんでも教師が悪い、学校が悪いとすぐ訴えられるからな。先生もできれば居残りなんてさせたくはない、食べたくないんだから」


長々と語り出すその様子から、なにか嫌な予感がした。


流れが悪いほうに向かっていく、予感めいたものが__。


「食べたくなければ食べなくてもいい。ただ、誰かに代わりに食べてもらうって手もある。自分の分を食べてもらえば、食べなくてもいいだろ?」


その言葉に、3人の背中がわずかに震えた。


代わりに食べてもらう?


お願いでもすれば、食べてくれるというのか?


いや、そうじゃない。


無理やり、食べさせればいい。


そうすれば【自分】が助かるのだから。


< 154 / 221 >

この作品をシェア

pagetop