死席簿〜返事をしなければ即、死亡


「んぐっ、ごっ‼︎」


パンを吐き出そうとするカレンの口を、篠塚が両手で塞ぐ。


矢井田ミキが体を押さえ込み、バタ足だけで懸命に抵抗してカレンの喉が__ごくりと動いた。


飲み込んだんだ。


パンを__3分の2の確率である、毒が喉を通った。


ようやく手を離した篠塚と、激しく咳き込むカレン。


「これって、助かったんじゃね?」


期待の眼差しを向ける篠塚は、今井がひとつ頷いたのを見ると跳び上がった。


「マジ⁉︎あたしマジ、幸運じゃね?」


そう言って喜びを爆発させる。


篠塚のパンに毒は入っていなかった。その証拠に、カレンがようやく身を起こす。苦しげに肩で息をしているが、毒が回ったようには思えない。


ということは__残りの2つに毒が入っている。


だから、篠塚有里華は助かったのか?


いや、そうじゃないだろう?


篠塚は自分のパンを無理やりカレンの口に放り込んだだけ。


その反対だって、当然ありえることにまだ気づいていない。


3人の中では1番、勝ち気な篠塚だが、今は生き死にがかかっている。人は追い詰められた時に、物凄い力を発揮するものだ。


ましてや、それまで虐げられてきたものなら余計に__。


今度は、カレンと矢井田ミキが視線を絡めた。



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