死席簿〜返事をしなければ即、死亡
「あたし、もう一抜けしていいよね?」
不穏な空気にまだ気づいていない篠塚は、自分は終わったのだと言わんばかり。
その証拠に、ペットボトルの水を半分ほど飲んで席に戻ろうとする。
その前に、矢井田が立ちはだかった。
「なんなの?あたしはもう終わったんだから、諦めてパン食べなよ」
「はぁー?あんたそれマジで言ってるわけ?自分だけ助かったらそれでいいの?友達のあたしは死んでもいいっていうの?」
矢井田が噛みつく。
「いや、なに熱くなってんの?てかさ、あんたもしかして、うちらダチだとでも思ってたわけ?」
「なっ__」
「ウケるんですけどー‼︎」
篠塚が、大げさに手を叩いて笑い出す。
この場に全くそぐわない下品な笑い声は、どこまでも響いていくようだった。
矢井田の顔がどんどん白くなっていく。
「邪魔!さっさとどけよ!」
急に表情を変えた篠塚が、あからさまな裏切りにショックを受ける矢井田の肩をど突いた。
よろけて尻もちをつくのは、精神的なものも大きい。
2人はいつも一緒だった。
虚勢をはるのも相棒がいたからこそ。磁石のように引っついていた2人が今、初めて離れたんだ。
そのまま矢井田を押しのけて席に座ろうとした篠塚だったが__。
「待ちなさいよ!」