死席簿〜返事をしなければ即、死亡


そこら中に血を撒き散らし、篠塚有里華は倒れた。


毒が回ったんだ。


パンを食べていないのに__?


制服が血で汚されたカレンは呆然と突っ立っており、矢井田も腰が抜けたまま立てないようだ。


「篠塚は運が悪かったらしい」


動揺していないのは、今井だけ。


こうなることが分かっていたように落ち着き払っている。


「ね、ねぇ?どうして、有里華は死んだの?」


堪りかねたように、矢井田が誰にともなく問いかけた。


確かに篠塚はパンを食べてはいない。


なにも食べてはいないんだ。


食べ、ては__?


「水」


洋子が呟いた。


水を飲んだと。


パンは食べていないが、ペットボトルの水を飲んでいた。


「パンに毒が入っているなんて、先生は一言も言っていない」


これ見よがしに言って、ほくそ笑む。


はなから騙していたんだ。


パンに毒が入っているように思わせておいて、実は毒が含まれていたのは水だった。だから水を飲んだものは、不運に見舞われたのだと__。


「うそっ」


カレンの口から、空気が漏れたような声がした。


「うそよ、そんな」


俺たちのほうを振り返ったカレンの鼻から、血が滴る。



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