死席簿〜返事をしなければ即、死亡
カレンは、水を飲んだ。
押し込まれたパンを吐き出そうと、口の中を濯(ゆす)いだ。すぐに床に吐き捨てたが、一滴でも喉を通ったはず。
「いやっ、死にたくない!」
顔を歪めて叫ぶその目から、血の涙が流れた。
口の端からも、耳からも血が溢れ出てくる。
「助けて、わたし死にたくない。死にたくない」
よろよろと俺たちの方に近づいてくる様は、まるで生きた屍だ。
ゾンビのように手を伸ばして向かってくるが突然、膝から崩れ落ちた。
「良かったな、矢井田」
「えっ?」
「お前が1番、運が良かったらしい」
その言葉に、運が悪かった末路を見つめる矢井田ミキの瞳は震えていた。
水を飲まなかったから、助かっただけ。
もし一口でも、ペットボトルを含んでいたら、穴という穴から血を流して目の前に転がっていた。
これで7人だ。
30人いた、俺たち3年1組はもう、7人しかいない。
そして確実に、これからもっと減っていく。
1人、また1人、全員をなぶり殺しにするつもりだ。
もう、作戦やタイミングだと言っている場合じゃない。
今すぐに。
今すぐにでも、今井を殺さなくては__?
俺は息をのみ込んだ。