死席簿〜返事をしなければ即、死亡
【楠木雷人】
「はい!」
廊下を全速力で駆けながら、高らかに返事をする。
この放送が流れているということは、協力者はまだ放送室に居るはずだ。
教室の今井は名前を呼ぶことができない。そっちは頼もしい小金沢に任せておけば問題ない。
【片平洋子】
「はい」
洋子と矢井田も、懸命についてきている。
4人で乗り込めば、放送を食い止めることができるだろう。
いや__俺ひとりでも良かったが。
階段を駆け下り、職員室を通り過ぎ、放送室の扉に手をかける。
すでに放送は途切れていた。
逃げたのかもしれない。
「行くぞ?」
ようやく追いついた洋子たちに声をかけてから、俺は扉を開ける。
中には__誰もいない。
「ねぇ、あれ見て」
矢井田が指差すほうには、四角い液晶があった。
そこに、今井が写っている。
椅子に縛られて項垂れている、クソ担任だ。
やっぱり俺たちの動きを、ここで見ていたのか。教室に監視カメラが仕掛けてある証拠だった。
今井に覆い被さる感じで、小金沢が腕組みをして見張っている。
向こうは大丈夫だ。
問題は、この放送室に隠れていた【協力者】を見つけないといけない。
逃げたなら厄介だが、俺にはどうしてもそうは思えなかった。
「雷人、どうする?」
洋子の問いかけに答えることなく、俺は放送のスイッチを入れた。