死席簿〜返事をしなければ即、死亡
「うそっ」
少し遅れてやってきた片平洋子が、そう呟いて口を押さえる。
生意気な矢井田ミキも、図体だけ大人びた空手部の北野義雄も、教室に入ってくるなり呆然と立ち尽くす。
椅子に縛られていた【僕】が立ち上がっていることに驚いたんじゃない。
僕の足元で転がっている、2つの死体。
床に突っ伏した小金沢篤と、後ろから殴りつけてきた猪俣直樹は死んでいる。
ここを出て行くまでは、頼もしく生きていた2人が息絶えている。
「楠木雷人」
今にも飛びかかってきそうな、その心意気を挫いてやる。
「__はい」
僕の口にはもう、ガムテープは貼られていない。
しかも__。
「知念さん、大丈夫?」
片平の気遣った声かけにも、知念は激しく首を振るだけ。
まだ暴れないだけいい。
小金沢たちとともに教室に残った知念瑠璃は、僕の腕の中で震えていた。
簡単にへし折れそうな首に腕を回し、ナイフの刃先を突きつける。
「い、いっ、猪俣くんがっ!」
それっきり、知念はしゃくり上げてしまった。
だから代わりに説明してやる。
「猪俣が僕を手助けしてくれたんだ」
「まさか、猪俣が協力者⁉︎」
「そうだ楠木、その通りだ」
「でも、じゃ、どうして__?」
「ここにきて怖じ気づいたから。臆病者は足手まといになる」