死席簿〜返事をしなければ即、死亡
俺は、洋子を抱き起こした。
強く強く、抱きしめる。
壊れてしまいそうなほど、強く。
「__雷人?」
「すまない」
抱きしめたまま、洋子の制服のポケットに手を忍ばせる。
指先が、冷たくて固い【もの】に触れた。
そっと取り出して、その画面を操作する。
洋子が、放送室に取りに戻った森本のスマホ。その中には、今井の声で俺たち生徒の名前が登録されているはず。
俺の名前も、この中に__あった。
「雷人?」
なにか違和感を察したのか、洋子が体を引き離そうとする。
俺は片腕で、洋子を掴んで離さなかった。
そしてもう片方の手でスマホをスクロールする。
「雷人、離して」
「__ごめん」
最後にそう言ってから、指先で押した。
【楠木雷人】
その文字に触れたと同時に、今井の声がした。
俺の名前を呼ぶ、声が__。
「いや、そんなのいや」
体をよじって暴れる洋子を、しっかりと両腕で抱きしめる。
もうスマホは必要ない。
俺には、必要がなくなった。
「雷人、お願い__私を、私を1人にしないで」
「__洋子」
なんとか振り絞った声で、その名を呼ぶ。
俺の大切な人の名を。
「よ__っ」
しかし、2回は呼ぶことはできなかった。