死席簿〜返事をしなければ即、死亡
「死ね」の大合唱。
生徒たちの圧に息が詰まりそうになるが、懸命に堪えて出席簿を開く。
「そ、それじゃ、出席を取ります」
そう言った途端、合唱はぴたりとやんだ。
水を打ったような静けさが襲いかかる。
一体、どうしたというのか?
驚いて生徒たちを見回すと、その目からは怒りが消えていた。その代わり、その目に浮かび上がるのは__恐怖?
そうか。
安達も一ノ瀬も、朝のSHRで出席を取った瞬間に突然死している。生徒が怯えるのも無理はないが、そんな偶然はありはしない。
「猪俣直樹」
廊下側、最前列の猪俣を見ると、いつもの威勢の良さはどこへやら、青ざめた顔をしている。
「う、うっす!」
奇妙な間があったが、猪俣は返事をした。
僕が名前を呼び、生徒が返事をする。
ごく当たり前のことだが、それだけでとても嬉しかった。
全員の緊張が解け、教室の空気が和らぐ。
ただの思い過ごしだ。
クラスメイトが続けて亡くなったのには、関連性はない。2人ともたまたま同じ時間帯に心臓発作を起こしただけ。
「一ノ瀬ミサ」
勢いづいた僕は、次の名前を呼んだ。
しかし返事はない。
それも当然か。いつも何かにつけて毒づいてくる一ノ瀬ミサが、素直に返事をするとは思えない。
それでも僕は__。
「一ノ瀬ミサ」
もう一度、名前を呼んだ。