死席簿〜返事をしなければ即、死亡


「神様は、あんたを先に殺せって言ってる」


のんびりした言葉とは裏腹に、素早くナイフを振り上げる知念さん。


私はもう、目を閉じて身を丸めるしかなかったが___。


その時、変な音が聞こえた。


くっくっくっ。


鼻が鳴ったような__?


「なにが可笑しい?」


「えっ?」


「なにが可笑しいんだ?」


そう問いかけられ、初めて矢井田さんが笑っているのだと知った。


肩を揺らして顔を歪めるが、痛みの中に浮かび上がってくるのは、侮蔑の微笑み。


「いたっ、マジで痛い。だから笑わせないで」


刺された脇腹をおさえながら苦しそうに話す矢井田さんは、真っ白な顔をしていた。


血がとめどなく溢れ、止まらないんだ。


それでも笑って、いる?


「せんせー、いいこと教えてやるよ」


「なんだ?」


「そいつのあだ名。まだ転校してきたばっかりなのに、そいつのあだ名は【かれとりむし】。彼氏を寝取る虫って、わけ」


「黙れ!」


急に激昂したのは、先生ではなく、知念さんだった。


「人の彼氏を取るのが趣味みたいよ。猪俣とも付き合ってた。隣のクラスの渡辺とも、援助交際もしてるって」


「黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ!」


奇声に近い声を上げ、知念さんが飛びかかった。


ぐしゃ。


ぐしゃ。


肉が裂ける音が聞こえる。


もう、矢井田さんの息遣いは聞こえない。


ただ肉をえぐる音だけが__。






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