死席簿〜返事をしなければ即、死亡
「洋子、返事しろ!」
【洋子、返事をしろ!】
いつもと違う。
雰囲気がまったく違っていた。
俺たちの担任は、もっと弱々しく、生徒の俺たちが苛立つくらいビクビクしていたのに__。
「呼ばれたら元気に返事をするように!」
出席簿を手に、ぴんと背筋を伸ばして胸も張っている。
猫背が自信のなさを表していたが、生徒ひとりひとりを見回して、最初の名前を読み上げた__。
「まずは、安達みつる!」
「えっ」
あちこちで、そんな間抜けな声が聞こえてくる。
俺ですら、絶句したくらいだ。
「先生‼︎」
バンッと机を叩いて立ち上がったのは、森本亜希子。
怒りに頬を震わせている。
死者を冒涜する教師が、許せないのだろう。
「そうか、安達は死んだんだったな」
悪びれるでもなく、薄ら笑いを浮かべる今井は、やはりこれまでの奴じゃない。
どれだけ生徒の俺たちに馬鹿にされても、優しさだけは失わなかったのに__。
「それじゃ、猪俣直樹!」
クラス中が、一斉に猪俣を振り返る。
それに気圧されたように「__はい」と、小さく返事をした。
「もっと大きく返事をしてくれ。そうじゃないと大変なことになるぞ」
軽く睨みつけ、今井は次の名前を呼んだ。