死席簿〜返事をしなければ即、死亡
「遠藤重人!」
担任に呼ばれた遠藤にも、視線が集まる。
素直に返事をするのか?それとも、しないのか?
参考書に顔を埋めていた遠藤は、クラスでは浮いた存在だった。
いわゆるガリ勉で、本来ならいじめの対象であったが「僕の勉強の邪魔をするなら、このペンで君の目を突き刺すけれどそれでもいいなら、ボールをぶつけたらいい」と、真顔で言い放った。
それ以来、ジョンソンさえ警戒して相手にしない。
いつもなら「はい!」と遠藤は返事をしていた。
それはつまり「出席しています!」という意思表示であり、授業では常に参考書を開いている。学校の授業は用無しだが、出席確認はきちんと返事をする。
だから今も返事をするものだと、俺たちは思っていた。
が。
「先生、今日は出席に含まれるんでしょうか?」
ようやく参考書から顔を上げた遠藤は、やや首を傾げたまま続ける。
「受験勉強をしていたのに、日曜日にまで僕たちを呼び出して。僕は死の真相なんてどうでもいいんです。ちょっと図書室に用事があったので、ついでに登校しましたが、出席に含まれないのであれば返事をする必要がありません」
そう言い切った遠藤が、再び参考書に顔を埋める。
つまり遠藤重人は、返事をしなかった。