死席簿〜返事をしなければ即、死亡
遠藤らしいといえば、遠藤らしい。
用事は済んだとばかり、参考書に顔を埋めるのを俺たち全員が見ていた。
もちろん今井も、出席簿を片手に中央の席の遠藤を見ている。
その目がすーっと細くなった気がした。
「遠藤、くん__?」
隣の席の洋子が、声を掛けた。
返事をしろという強制じゃなく、心配しているような声色。
後ろの俺の席からは、遠藤がなにかノートにメモを取っているしか見えない。
その手が__小刻みに震えている。
やがてその震えは大きくなり、ノートにいびつな円を描いているのが、立ち上がった俺の目にも明らかで__。
とうとう、ペンが真っ二つに折れた。
あまりの激しい震えに、ボールペンが折れたんだ。
「ひっ!ひっっ‼︎」
息をするたび、おかしい声を上げる遠藤は、体全体を痙攣させて床にうずくまった。
「え、遠藤くん?」
周りの奴らは少しでも遠藤から遠ざかろうとするのに、洋子だけが倒れた遠藤に寄り添う。
恐る恐るといった様子で、体を丸めて動かなくなったクラスメイトの肩を揺すった。
1度、2度。
揺すった様子が、泣きそうな顔で俺を振り返る。
その瞬間、俺は悟った。