死席簿〜返事をしなければ即、死亡
「江東奈美」
続けて名前が呼ばれ、俺たちは唖然と黒板を振り返った。
今井が__何事もなかったかのように、窓際を見ている。
そこで小さく震えている、江東奈美を。
目の前で遠藤が死んでいるというのに、出席確認を続ける担任を信じられない思いで見返している江東の目から、涙が溢れた。
「__はい」
それでも小さく返事をする。
江東奈美は、名前を呼ばれて返事をした。
満足気に頷くと、続けて今井は名前を呼ぶ。
「片平剣」
「えっ⁉︎」
名前を呼ばれた片平剣は、返事よりも先に間抜けな声を出した。
驚いた顔をしているが、その横顔は強張っている。
教室の中央に死体が転がっているのに、なぜか俺たちは片平剣が返事をするのかしないのか、固唾を飲んで__。
「へ、返事するわけねーし!」
どちらかというとお調子者の剣は、無理に強がって見せる。
それで皆んなの注目を集めるという、いつもの悪い癖だ。
「剣、今は言う通りにしたほうがいい」
近くに寄ってアドバイスをするが、耳を貸さない剣はどうってことないと笑ってみせる。
愛嬌のある、クラスを和ませるスマイル。
ホッと教室が1つ息をついた時、柔らかいはずの微笑みが歪み始めた。