死席簿〜返事をしなければ即、死亡
「楠木くん、私がみんなを連れ戻すから!」
そう言って駆け出ていったのは、森本亜希子だ。
責任感の強いクラス委員がみんなを連れ戻すからと。
だから、俺に返事をしろと?
「雷人‼︎返事をして!」
目の前で、洋子が泣いている。
その涙は、俺を思ってのことなのか?
俺のために__?
「はい」
俺は静かに返事をした。
悔しくて悔しくて仕方なかったが、これ以上、洋子を泣かせるわけにはいかない。
今井が、ふっと鼻で笑う。
すぐにでも飛びかかって殴りつけてやりたかったが__。
「久保明奈」
今井は平然と次の名を呼ぶ。
だが、返事さえすれば大丈夫だ。
返事さえ__。
「明奈が居ない。そんな」
洋子がぼそりと呟いた。
小学校から洋子と仲の良い久保明奈は、北原麻美が叫び声を上げて教室から飛び出していったのにつられ、逃げ出したんだ。
久保だけじゃない。
半数が居なくなっている。
「まずい」
俺も逃げだがみんなを追いかけようと、教室を出た。
「楠木‼︎」
呼び止める声に振り返る。
一匹狼の小金沢篤が、厳しい顔で立っていた。
「返事をすればいいのか?全員、返事をすれば助かるんだな?」
「ああ、頼めるか?」
「ここは任せろ」
頼もしく頷く篤に頷き返し、俺は教室を飛び出した。