死席簿〜返事をしなければ即、死亡
「小金沢篤」
今井の声が、廊下にまで聞こえてくる。
「はい」と、篤が返事をするのも、その返事に不本意なものが含まれているのも分かった。
すぐ先で倒れている、北原麻美を助け起す。
しかし、もう北原は死んでいた__。
「篠塚有里華」
「へ、返事すればいいんでしょ?はい!」
「世良幹也」
「俺?は、はい!」
「知念瑠璃」
「__はい」
教室に残っているものは、すぐに返事をしている。
これじゃ、逃げたみんなの名前が呼ばれるのも時間の問題だ。
それはきっと、先に追いかけていった森本亜希子が引き戻してくれるだろう。
そんな淡い期待を胸に、その先に突っ伏している生徒に駆け寄る。
久保明奈だ。
久保も、死んでいる。
「戸田紳二」
そんな名前を呼ぶ声が、確かに聞こえてきた。
でも戸田は、真っ先に教室を飛び出していかなかったか?
久保の死体を廊下の端に寄せた時、階段の下のほうから叫び声が聞こえてきた。
「と、戸田くん‼︎」
森本亜希子の声だ。
それに紛れて、誰かが苦しむ声も聞こえてくる。
返事をしなかったからだ。
名前を呼ばれて、返事をしなかったから__。
「沼井千代!」
どこまでも響き渡るような声はでも、逃げ出していったみんなのところまでは、届かない。