死席簿〜返事をしなければ即、死亡
「沼井、返事をしろ‼︎」
階段の上から身を乗り出して、すでに一階まで降りているみんなに向かって叫んだ。
あの中に、沼井千代も居るはずだ。
名前を呼ばれたのがたとえ聞こえていなくても、返事さえすればいい。
「みんな、教室に戻って‼︎」
必死でクラスメイトを引き止めている、森本亜希子の声も聞こえてくる。
それと同時に__。
「浩志ジャクソン‼︎」と、今井が呼ぶ声も。
これまでのどの生徒を呼ぶ声より大きいのは、きっとジャクソンを挑発しているからだ。
いつも教師に歯向かってきたジャクソン。
やはり、素直に返事をするわけがない。
今井と睨み合っているのが、自然と目に浮かんでくる。
今だ。
この間にみんなを連れ戻す。
俺は勢いよく階段を駆け下りた。
「みんな!学校から出るな、出ると死んでしまう!」
声を張り上げながら、転がり落ちるように一階に向かう。
だが時間はない。
ジャクソンはぎりぎりまで粘るだろう。意地やプライドがある。返事をするのはつまり【負け】を意味するからだ。それでも、死にたくはない。
限界の一歩手前で返事をするはずだ。
そして今井は次の名前を呼ぶ。
「堀江花子」