死席簿〜返事をしなければ即、死亡
「水谷昭一」
「水口智花」
立て続けに、名前を呼ぶだろう。
「村瀬敦也」
確か、村瀬は教室に残ったはずだ。
すぐに返事をしたなら、すぐに次の名が呼ばれる。
「諸岡つとむ」
「矢井田ミキ」
俺は、階段を降り切った__。
しかし、そこにはもう誰も居ない。
「米倉聖夜」
玄関だ。
すぐこの先の玄関から、校舎を出ようとしたはず。
この悪夢のような現実から、逃げ出そうとしたはずだ。
「凛田つかさ」
今井が名前を呼ぶ声が、聞こえたような気がする。
ここまで、聞こえるはずなんてないのに。
「和久井進」
男子最後の名前が、呼ばれる頃か?
俺は玄関に向かった。
その足取りは、鉛のように重い。
あれだけの速さで階段を降りたのに、一刻も早くみんなを教室に連れ戻し、返事をさせないといけないというのに、俺は一歩一歩、引きずるように足を進める。
異様に静かな玄関に__。
さっきまで悲鳴と、森本亜希子の説得する声が喧しいくらい響いていたのに、どうして何も聞こえない?
「和田カレン」
女子最後の名前が、呼ばれただろう。
全員の名が呼ばれ終わったはず。
俺は、玄関にたどり着いた。