死席簿〜返事をしなければ即、死亡
「き、起立」
日直の号令で、全員が立ち上がった。
立ち上がったんだ‼︎
これまで誰1人、立つことなどなかったのに。
「礼」
頭を下げたのは半分ほどだった。
ジャクソンや楠木、小金沢あたりは突っ立ったままだ。
生意気にふて腐れている。
まだ色々と叩き込む必要があるが、まぁいいだろう。
「着席」
全員が椅子に座る。
半数ほどが空席だが、それは仕方がない。
円滑に授業を進めるための犠牲だ。理想の教師に近づくためには、必要なこと。
「それじゃ、数学の授業を始める。教科書の34ページを開いてくれ」
黒板に向かって、数式を書く。
背中に痛いほどの視線を感じる。
これまでなら、誰も見向きもしなかった僕の授業。
誰も聞いちゃいなかった。
それがどうだ。
教室は水を打ったように静まり返り、教師の僕の一挙一動を緊張の面持ちで見守っている。
立場が逆転したんだ。
僕は無敵だ。
この死席簿がある限り、生徒に立場を奪われる心配はない。
でも__。
まだ甘い。
これまで僕のことを散々、バカにしてきた生徒たちに思い知らせる必要がある。
逆らうなら、名前を呼ぶだけだ。
もし死ぬのなら、それはそれで構わない。
だって。