死席簿〜返事をしなければ即、死亡
誰もがはっと息をのむ。
振り返った今井が、目の前まで迫っていたジャクソンの名を呼んだ。
その声は鋭くて大きくて、稲妻に貫かれたようにジャクソンも動きを止め、唖然と担任を見返す。
「__はい」
返事をするしかない。
しかし。
「浩志ジャクソン!」
今井がまた名前を呼ぶ。
「はい」
「浩志ジャクソン!」
叱りつけるように、何度も名前を呼ぶ。
ジャクソンの手がナイフから離れ、戦意が次第に喪失していくのが目に見えて分かった。
それなら俺たちがやるしかない!
そう思って踏み込むが__。
「小金沢篤!楠木雷人!」
先に名前を呼ばれ、足が止まってしまう。
「はい」と2人して返事をした時にはもう、今井を叩きのめす勢いは消えていた。
「全員、席につけ」
俺たちはしばらく睨み合っていたが、どうせまた名前を呼ばれるだけだ。
名前を呼ばれたら必ず、返事をしないといけない。
返事をするということは、相手に従うということ。
従わざるをえないこの状況が、もどかしくて仕方がなかった。
大きな音を立てて椅子を引き、席につく。
「江東奈美」
「__はい」
「それじゃ改めて答えてもらおう。30一14=16。この数式の意味を答えなさい」