死席簿〜返事をしなければ即、死亡
「前に来て答えなさい」
今井の言葉にびくっと体を震わせた江東奈美が、半泣きで黒板に向かう。
びっしりと、3年1組の生徒の名前が書いてある。
その数は30名。
30?
あの問題の式と同じ。
「これだけヒントが書いてあるのに分からないのか?ほら、30から引けばいい」
そう言うと、今井が名前を消した。
【安達みつる】の名前を、消したんだ__。
そのまま黒板消しを、江東の手に押しつける。
「正解は16だったな?ということは?」
「えっ__?」
顔を歪めた、江東奈美の横顔。
きっと悟ったんだ。
数式の意味を、理解したんだろう。
「ほら、16にしないと」
そう言うと、江東の手をもって【鮎川沙奈江】を消し去った。
続けて【一ノ瀬ミサ】を消す。
「い、いやっ‼︎」
江東が、無理やり掴まれていた手を振り払う。
「なにが嫌なんだ?これは、立派な授業だ。数学を通して【命】の尊さをお前たちに教えている。これは命の授業だ。拒否することは許されない」
黒板消しを突き出すが、江東は首を振っていやいやをする。
それでも強引に黒板消しを持たせ【遠藤重人】を消した。
「次は誰だったかな?」
白々しく俺たちを振り返り【片桐剣】を消す。
俺たちに、思い知らせるかのように。